#1 看護師国家試験のタクソノミ―(評価領域)による分類

目次

平成28年2月22日、医道審議会保健師助産師看護師分科会が保健師助産師看護師国家試験制度改善検討部会報告書において、評価領域分類(Taxonomy)について以下のように述べています。

評価領域分類(Taxonomy)については、出題の意図や出題内容に適した評価領域分類で出題することを前提に、必修問題では評価領域分類Ⅰ型(知識の想起・推定)を、状況設定問題では評価領域分類Ⅱ型(解釈)及びⅢ型(問題解決)を中心として出題することが望ましいとされている。

必修問題については、これまでの出題状況は概ね良好であり、引き続き、評価領域分類Ⅰ型で出題していく。その他一般問題及び状況設定問題については、教育で培われた状況判断能力や実践能力を問うために、評価領域分類Ⅰ型ではなく、Ⅱ型やⅢ型での出題割合を上げるような改善が必要である。具体的には、視覚素材の活用や長い状況文を付した状況設定問題の導入などによって、知識の単純想起型の出題をできるだけ減らしていく。

つまり、今後も必修問題はⅠ型、一般問題や状況設定問題はⅡ型及びⅢ型の問題が作成されるような方針が示されています。
このタクソノミ―のⅠ型~Ⅲ型とは、どういった問題であるのか、厚生労働省より示されている保健師助産師看護師国家試験公募問題作成マニュアルで確認してみます。

Ⅰ型(単純想起型)

単純な知識の想起によって解答できる問題です。 

思考過程

設問 → 知識の想起 → 解答 

[問題]代謝性アシドーシスで正しいのはどれか。
1.血液のpHは上昇する。
2.動脈血炭酸ガス分圧(PaCO₂)は上昇する。
3.呼吸中枢は抑制される。
4.血中HCO₃⁻濃度は低下する。 

Ⅰ’型(推定型)

3年間看護師学校養成所で学んだ知識に基づく常識をはたらかせれば解答できる問題です。
知識をある程度覚えておく必要はありますが、確実に記憶していなくてもある程度の看護における常識を用いれば推定できる問題です。
標準的な看護計画や看護師の望ましい行動など、看護師がもつべき常識を問う問題です。 

思考過程

設問 → 常識 → 推定 → 解答

[問題]癌末期患者の痛みに対するアセスメントで最も適切なのはどれか。
1.患者の痛みのスコア
2.患者の痛みに対する看護師の印象
3.患者の言語的・非言語的手がかり
4.看護介入後の患者の痛みの緩和 

Ⅱ型(解釈型)

設問文(もしくは解答肢のいずれか)で与えられた情報を理解・解釈して、その結果に基づいて解答する問題です。
理解・解釈という思考過程は1回です。設問文は状況を伴わず、解答肢で思考を要求する場合もあります。 

思考過程

設問(データの提示や状況の設定) → 理解・解釈 → 解答

[問題]軽度の嚥下障害のある片麻痺患者の呼吸数が上昇し、末梢のチアノーゼが観察された。聴取できる呼吸音はどれか。
1.両側の肺尖部の呼吸音の消失
2.気管支部の連続性ラ音
3.片側全体の呼吸音の減弱
4.肺末梢部の非連続性ラ音 

Ⅲ型(問題解決型)

理解している知識を応用したり、複数のデータや状況を分析したり、その各要素を意味ある全体にまとめあげる能力を要求する問題で、具体的な問題解決を求める問題です。 

この能力をもつ人は、新しい、あるいは初めての問題を解決するために、理解している知識を動員し、適切な情報を集め、問題を同定して仮説を説明するための計画を立て、それによって得られた結果の解釈を分析・統合し、解決計画を決定することができます。 

設問文の情報を解釈(1回目の思考)とするのみではなく、各選択肢のもつ意味を解釈(2回目の思考)しないと解答できない問題です。 

思考過程

Aさん、54歳の女性。左大脳梗塞のため入院中である。夕食後、Aさんがナースステーションに来た。
看護師:「Aさん、どうされました?」
Aさん:「お・ん」
看護師:「おん…。なんでしょうね。」
Aさん:「……」(腋窩に手をはさむ)
看護師:「あっ、体温計ですか?」
Aさん:「はい」
看護師:「体温計は渡しましたよ。また測りますか?」
Aさん:「うーん」(手で足元を指し、さらに部屋の方を指す)

[問題]看護師の対応で最も適切なのはどれか。
1.Aさんとともに病室に行く。
2.再度「体温計が必要ですか」とゆっくり問い直す。
3.50音ボードを持って来る。
4.鉛筆とメモ用紙を渡す。 

おわりに

このようなタクソノミ―(評価分類)に基づいて看護師国家試験の問題は作成されています。
当スクールではこれにならい予想問題を作成し、受講生の皆さんの国家試験合格へのサポートを行っています。 

春から秋の時期は、過去問題を解いて問題の出題形式に慣れましょう。
繰り返し問題を解いているうちに、ベースとなる知識が蓄積されるだけでなく、上で示したような思考過程が自然と身についてきます。
同時に実習における看護実践でも、この思考方法を鍛えることができます。
当スクールでは、春に解剖生理学と弱点項目、夏に必修対策、秋に頻出疾患を取り扱い、過去問題を用いた講習で受講生の皆さんの勉強をサポートしています。 

実習が終了する秋から冬の時期は、それまでの過去問題を使った勉強や実習で身につけた力を試すことが重要です。
国家試験では、過去問題の言葉や問われるポイントを変えた問題が多く出題されています。
そのような問題に対応するためには、これまでに身につけた思考過程を駆使し、冬に予想問題で新しい問題を解いていきましょう。
当スクールの冬期講習では、オリジナル予想問題を多く取り扱っておりますので、受講生の皆さんの力試しにご活用いただけます。 

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